受け取ると、それは横幅の
太い厚みのある棒状の
物で、すぐに爪やすり
だってわかった。



「やすりをかける時は
一方向に、丁寧に、です」



短くアドバイスをして、
彼女はまた壁際に戻っちゃう。

これ以上のやり方指導
とかは期待できないみたい。



「ホラ、陽菜」



待ちくたびれたように
玲斗がまた声をかけた。



あたしは最後に一度大きく
深呼吸して、覚悟を決めて
玲斗の指先に触れた。



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