薄い形のいい唇からもれる
のは、吐息ともため息とも
つかない、かすかな笑い声。



「――かわいい。

もしかして、おびえてる?」



言葉の最後にクスッと
つけ足された笑いは
限りなく妖艶で、思わず
ゾクッとした。



それをまた敏感に察して、
目の前の男は笑い――

そして一歩、あたしへと
足を踏み出す。



「やっ、やだっ。

来ないでよっ!」



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