《完》天使の微熱 〜アクマなアイドル〜

だけどその途中、いきなり
フッとあたしの体を引いて――
距離が縮まった瞬間に、
彼はあたしの耳元で囁いた。



「いい顔だったよ。

オレが今すぐ抱きたいって
思うほど」



「……………!」



誰にも気づかれず
落とされた甘い囁き。



そしてもう一言、



「今夜、あの部屋で。

必ずおいで。賭けの結果を
発表するから」



その言葉だけを残り香の
ように残して、セットを
降り切るとあたしを離し、
何事もなかったように
去っていく。



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