「大丈夫だよ。今夜は誰も
呼ばない。

ただ、家に帰る気がしない
だけだ」



あのホテルの使用目的は
たいがい誰かとの密会だった。



女優だったりモデルだったり――

不特定多数の退屈しのぎの
相手とかりそめの夜を
過ごす時に、いつもあの
部屋を使っていたのだ。



「まぁ数え切れない前科の
ある身で言っても信じられ
ないだろうけどね。

でも、とにかく今夜は
あっちに向かって」



有無を言わせない口調で
繰り返すと、映紀は諦めた
ようにため息をついて、



「――わかったよ。

じゃあ、とにかく出よう」



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