「人の苦労も知らないで、
いい気なものだよ……」



ここまでの自分を作り
上げるのに、どれだけの
葛藤と苦労があったか。



陽菜がそれを知らないのは
当然なのだけれど、それ
でもずいぶんな皮肉だと
思わずにはいられなかった。



「まったく……」



今度は深いため息を
ついて、玲斗は鏡の前の
椅子にドサリと腰をおろす。



鏡の中の自分の顔を、
ジッと見つめてみた。




――デビュー作の映画で
新人賞を受賞。

その後も立て続けに映画や
ドラマに出演し、今では
一流芸能人のレベルに達した。



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