それでもなんとなく帰る気にはならなくて、開いた窓に身をあずけてグラウンドをぼうっと見つめた。
もう、ふかやくんの走ってるとこ、一生見られないんだろうな。
卒業したらふかやくんはどこに行ってなにをするのかな。
陸上はずっと続けていくのかな。
ぜんぜん、わかんない。
知る術もない。
きっとこのまましゃべることもなく、ふかやくんはわたしの存在を知ることもなく、ふたつの人生は交わらないで続いていくんだろう。
「――陸上好きなの?」
心臓、止まるかと思った。
もしかしたら止まったのかも。
心臓が止まっちゃって、死んじゃったから、こんな夢を見ているのかも。
「なんで……」
「だって、ずっとここにいたよね」
そうじゃなくて。
なんで、ここにいるの?って聞きたかったんだ。
赤く差す夕陽を背中で受け止めて逆光になった顔が、窓の向こう側からねむたそうにわたしを見下ろしている。
このねむたそうな目ならよく知ってる。
当たり前だ。
だって、だって……ずっと見てた。
「……知ってたの?」
「知ってる」
ふかやくんは声のトーンも顔の色もまったく変えないで言った。
かあ、と顔が熱くなるのがわかる。
ほんとにいますぐ消えてなくなってしまいたいと思った。



