なににも使われていない物置みたいな空き教室は埃っぽいにおいがする。
夏の終りの赤い夕陽がななめに差しこむ窓際は、ここ半年くらいでわたしだけの特等席になった。
遠くのほうで野球部がふまじめに笑いながらティー練をしている。
その隣でサッカー部がじゃれあうみたいにドリブルをしている。
陸上部は、いちばん手前。
だいたいみんなしゃべりながら楽しそうに10分くらいのウォームアップをして、それぞれの種目の練習に黙々と取りかかり始めるのがルーティン。
陸上は、自分との闘いだと思う。
ライバルはいつだってきのうの自分で、そこには傍で支えてくれる仲間さえいなくて。
1秒にも満たない時間の世界。
ふつうに生きていたらまばたきで済ませてしまう刹那を、ふかやくんたちは見つめて、感じて、生きているんだ。
きっと逆立ちしたってわたしには触れられない。
だからこそまぶしくて焦がれて、仕方ないのかもしれない。
この夏で引退してしまった3年生の姿はひとつもなかった。
もちろん、ふかやくんもいなかった。
そりゃそうだよね。
ぜんぜん期待してなかったからいいんだ。
ただここに来るのがもう癖みたいになっちゃってるだけだ。



