ふかやくんにはぜったい勝てないライバルがいること、知っていた。
それが、いつも同じ校舎でいっしょに過ごして、いつも同じ陸上部で練習している仲間だということも。
ふかやくんはいつも2番目だった。
どんなにたくさん走っても。
どれほどの努力を重ねても。
どれだけ走るのが好きでも。
ふかやくんはいつも2番目だった、はずなのに。
どうしようもないなにかが下腹のあたりからこみ上げてくる。
熱くて強くて怖いなにかは、いつしかわたしの涙腺までやってきて、簡単に涙に変わろうとするから困った。
ふかやくんが1番になれてうれしい。
ほんとにうれしい。
やっぱり競技場で見たかったよ。
一生分の勇気を使い果たしてでも応援に行けばよかった。
ゴールテープを切ったふかやくんがどんな顔をしていたのかこの目で見てみたかった。
こみ上がりそうな涙を必死にこらえながら、それでもがんばってふかやくんの背中を見つめる。
表彰状を丁寧な動作で受け取り、5組の列に戻ってきたふかやくんは、周りのみんなからたくさんのおめでとうをもらっていた。
あの場所にいたかった、と思うより先に、目を疑った。
ふかやくんが笑ってる。
重たい前髪に隠れそうな目をきゅっとすぼませて。
ふかやくんは、あんなふうに笑うんだ。



