そういうわけで、ふかやくんについてよく知ってる人はほとんどいなくとも、彼が陸上部だということならきっと学年中の誰もがなんとなく知っているはず。
ずっとわたしも、そのうちのひとりだった。
ふかやくんが実は長距離の選手だということも、あんなふうに走る人だということも、たまたま至近距離で見かけたあの瞬間までは興味もなくて。
ピンと伸びた背筋がとても凛としてた。
いつもモッサリ重たそうな前髪で隠している顔を、苦しそうに、幸せそうにゆがませてた。
その姿からなんだか、どうにも、目をそらせなくなってしまった。
ふかやくんは走るのがほんとに好きなんだ、ってなぜかじんわりしたんだ。
こんなに夢中になれるなにかを持てることはひょっとしたら奇跡なんじゃないかって、おかしな感動を覚えるくらいに。
こんなふかやくんを知っている人はどれくらいいるんだろう?
いつもは隠れてなかなか見えない、ふかやくんのひみつ。
知ってしまった瞬間にはもうむくむくと興味が湧いて、もっと知りたいって気持ちに蓋をできなくなっちゃってたよ。



