となりの女の子

それからというもの−−−−−

“親元を離れてでも野球にかけてみたい!”

この決意が体力づくりは勿論のこと、まるで別人のように寛太を机に向かわせた。


そんな姿を見て、なんとも複雑な思いを抱かずにいられないのは颯太だ。


まだ将来が明確なものではなく、とりあえず今は、後々どうにでも転がれるようにとレベルの高い高校を目指すばっかりに、偏差値や内申に捕らわれしまっている感じの颯太からしてみれば、
夢を現実として見つめはじめた寛太に先を越された気分というか…

いつも一緒にいて、知らず知らずのうちに互いの足りない部分を認め補い合うことができた幼い頃は
“二人で一人”が当前だったし、何よりも安心できたことは共に同じ気持ちだったと思う。


しかし、どうしても補いきれない部分に劣等感を抱きはじめると、一緒にされることを嫌うようになっていった。


ただの兄弟でもコンプレックスくらいあるだろうに…
“これが双子に生まれてきた宿命なんだ”と受け入れるしかなかった二人は、
嫉妬心を抱きながらも“ソレ”を気付かれまいとするうち、いつしか互いに“無関心”を装う演技を身につけていた。

我慢することも多かったが、露骨に僻み合うことも無く、平和な日々を過ごせたのもソノお陰だろう。


勿論、素直に表現しないだけで、心の中で応援し合う場面も幾度もあった。


これが他人だったら“ライバル”と言えたのではないだろうか?


そんな色々な気持ちを抱えつつも“ずっと一緒”などとは、更々、思ってもなかったにせよ、いざ、岐路に立たされると、

“嘘だろ?……”

不意打ちを食らい、何も言えない自分がいた。

いや、

一歩先を行こうとしているソノ背中を見て、不安を感じているのが自分の方だったことに驚いたのだ。


「自分の方が上だと思ってたんだな…そもそも、ライバルなんて関係は成立していなかったんだ…」


・・・でも、動揺していることを悟られぬよう演技をする颯太。

早く気持ちを切り替え、冷静さを取り戻すのには、これが一番手っ取り早い方法だった。


そして、プレッシャーを与えない程度の応援が最大の心遣いなのだと

「な〜んか腑に落ちないんだけどさ、(俺には俺のやり方があるし…)ま、頑張れよな!」

「お、おうよ。」

以後、二人がこの件で会話することは無かった。