粉雪の舞う夜

手が赤くなって、痛くなるもの気にならなかった。


痛みを超えて感覚すらなくなってきている。


面倒なことが嫌いな私は、本来なら止めているだろう。


でも、今は違う。


少しでも正典さんと過ごす時間が増えるなら、苦手なことでも、面倒なことでもやる。


ペタペタ、ペタペタと雪玉を大きくしていく。


二人で向き合って『楽しいね』とか、『寒い!』とか、鼻や頬を真っ赤にしながら雪だるまを作る。


二人だけの時間。


とても、愛しく感じる時間。


もっと、もっと……。



この時間が永遠に終わらなければいいのに……。


「ねぇ、正典さん」


「ん?」


私は、手を休めることなく正典さんに話しかけた。


「昨日、正典さん言ったよね?
…奇跡ってあると思うかって……」


あの時は、奇跡なんて信じてなかった。


「私が、信じれるものは自分の目に映るものだけだった。
……けど、今は違うよ」


「……早紀ちゃん?」


ずっとふざけてばかりいた私を、急にどうしたって感じの顔で見てくる正典さん。


「昔、お婆ちゃんが言ってたんだ。『聖なる夜に雪が降ると奇跡が起こる』って」