知らないのが当たり前だと言われても、私は彼との事を知りたい気持ちでいっぱいになった。


そう思った途端、私は自分でも気付かないうちに正典さんを抱き締めていた。


すると、嬉しそうに微笑む彼がいた。


でも、嬉しそうだけど、やはりどこか寂しそうに見えた。


「俺と早紀ちゃんが前生きていたのは、争いが耐えない世界だった。
生きるためなら、人も殺してきた。
……そんな、死と隣合わせの中でも、俺は君と出逢って俺は君に恋をしたんだ」



正典さんが話している間、私は頷くこともなく、ただ聞いていた。


「そして、思った。
君だけは、早紀だけは生きていてほしいと。
ずっと守ると誓ったんだ。なのに……」


過去を思い返し辛さに耐えられなくなったのか、正典さんの体が微かに震えていた。


だから、私は正典さんを抱く力を強めた。


「大丈夫?」


座ったまま俯いている正典さんの顔を覗き込むと正典さんは、ゆっくりと頷いてくれた。


そして、また話しを続ける。


「俺は……、守ると誓ったのに君より先に、この世を去ってしまった…。今みたいに、雪の中君に抱かれて……俺は。
その時、死ぬ間際で唯一出来た約束が…」