こうしていると、彼が幽霊であることを疑いたくなる。


普通に話して、遊んで息を乱して汗をかいて……。

何一つ、私と違うとこなんてないのに……。


そう思うと、私は急に正典さんに触れたくなった。


私が彼の服を握ると少し上から『どうしたの?』と、笑顔と共に彼の笑顔が降ってきた。


私、正典さんの笑顔好きだなぁ。

なんか、癒される感じだ。


「なんか、不思議だよね?早紀ちゃんと、またこうして過ごせるなんて思ってもみなかった…」


「また?」


あぁ、そっか正典さんは前世の私を知ってるんだよね?


前世の私は、正典さんとどうやって過ごしてきたんだろう、なんて考えていたのを読み取ったのか、正典さんは起き上がると静かに口を開いた。


「早紀ちゃんが、俺の事覚えてないのは当たり前なんだよね。
普通なら、会う事もないんだから…でも、俺はどうしても会いたかった。
前の世で、早紀ちゃんともう一つしたかった約束が出来なかったから。
だから、今度こそって思って」



正典さんの表情が、だんだん曇っていくのを見て私は、辛さを覚えた。


彼は私のことを知っているのに、どうして私は覚えてないの?