『それ王子様にあげるわ』
「え?」
『私のものじゃありませんし。おじいちゃんに言われてここまで一緒に来たけど、王子様は金庫を開けられそうにもないし』
「……」
自分には不可能だと言われたようで王子様は少しムカつきました。
『私、結婚させられるって聞いてどんな王子様かと思ってたけど、別にどうでもよくなったわ。金庫の中身を知らなくたって私は生きていけるし』
「……僕には国を背負う責任があるんだ。父様が勝手に決めた許婚らしいけど、もっと階級や民のことを考えられる女の人と結婚しなくてはいけないんだ。残念ながら君とは結婚できない」
『王子様って本当に王子様らしいのね……好きな人とかいないの?』
「好きな人などつくるつもりはない」
『……』
王子様はきっぱりと言いました。
少女は一瞬だけ悲しそうな表情を見せましたが、すぐに俯いてしまい、王子様は少女が何を思ったのかわかりませんでした。


