とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




馬車に揺られながら『早く会いたい』と思う気持ちを抑える。



『今日は壁画を見に行こうって話してたんだ。』



『あ~…あの洞窟の?』



それはかなり足場の悪い所にあって、現地の人間でさえあまり近付かなかった。



『…忍も連れてくのか?』



『いや、さすがに俺もどうかと思ってさ…
だからニコラスと二人で行って来る。忍はお前に任せるよ。』



『ああ、それはいいけど気をつけろよ?』



そう言いつつも忍と二人で過ごせる事にテンションが上がる。



ユーリはそんな右京に気付いたのか、横目で見て微笑んだ。



『その後、何か思い出せたか?』



『少しだけ…』




家族の話を聞いて、ぼんやりと思い出したがいまいちはっきりしなかった。



忍に関してもまだどこまでの仲なのかもはっきりしない。



『まぁ、今日は邪魔しないからゆっくり話すといいよ。』



ユーリに感謝しながら『ああ』と頷いた。





道の先に街が見えた。




『おっ…ウキョウ。お迎えだ。』




馬車に気付いて道端に座って居た人物が立ち上がるのが見えた。



右京はそこまでの時間が惜しくて馬車を飛び降りて駆け寄る。




「おはよう!」



「おはよう、右京…」




ただの挨拶ですら幸せを感じる。