馬車に揺られながら『早く会いたい』と思う気持ちを抑える。
『今日は壁画を見に行こうって話してたんだ。』
『あ~…あの洞窟の?』
それはかなり足場の悪い所にあって、現地の人間でさえあまり近付かなかった。
『…忍も連れてくのか?』
『いや、さすがに俺もどうかと思ってさ…
だからニコラスと二人で行って来る。忍はお前に任せるよ。』
『ああ、それはいいけど気をつけろよ?』
そう言いつつも忍と二人で過ごせる事にテンションが上がる。
ユーリはそんな右京に気付いたのか、横目で見て微笑んだ。
『その後、何か思い出せたか?』
『少しだけ…』
家族の話を聞いて、ぼんやりと思い出したがいまいちはっきりしなかった。
忍に関してもまだどこまでの仲なのかもはっきりしない。
『まぁ、今日は邪魔しないからゆっくり話すといいよ。』
ユーリに感謝しながら『ああ』と頷いた。
道の先に街が見えた。
『おっ…ウキョウ。お迎えだ。』
馬車に気付いて道端に座って居た人物が立ち上がるのが見えた。
右京はそこまでの時間が惜しくて馬車を飛び降りて駆け寄る。
「おはよう!」
「おはよう、右京…」
ただの挨拶ですら幸せを感じる。

