この兄弟達との何気ない日常は楽しかった。
ここに自分が居てもいいんだと思わせてくれる。
だがそれは錯覚に過ぎない事をウキョウは…そしてユーリも判っていた。
酒場のカウンターでユーリはビールを煽りながらポツリと呟いた。
『お前はいつまで居てくれるんだろうな…』
『なんだよ、急に…』
『妹も弟もお前になついてるだろ?
ウキョウが居なくなったら寂しがるだろうなってさ…』
『…そうだな…』
上手く言葉が見つからずウキョウはそう答えてジョッキに口を付けた。
何処かの席でグラスの割れる音がしてウキョウ達は振り返った。
酔った客同士が揉め出してギャラリーから歓声が上がる。
『…こんな事前にもあった気がする…』
『え…?じゃああの怪我も喧嘩で出来たのかな…』
『…どうだろう…』
記憶が曖昧過ぎてはっきりしない。
ウキョウはゆっくり立ち上がるとその騒ぎの渦中へと歩き出した。
『お…おい!ウキョウ!?』
慌ててユーリがウキョウを追いかけて来たが『心配ない』と制止を振り切った。
『マジかよ…ったく、もう介抱しねーからな!』
そう言うユーリをチラッと振り返ってウキョウは微笑んだ。

