仕事が一段落して三人は家路に着いた。
ウキョウは馬車に揺られながら意識を取り戻した日の事を思い返していた。
手綱を握るユーリはウキョウに対して最初から偏見を持っていなかった。
あの日ユーリの話だとずっとうなされながら何かを言っていたらしいが、英語ではなかったと言う。
自分の名前くらいしか覚えていないウキョウはしばらく塞ぎがちだった。
そんな時ユーリはウキョウの目を見てこう言った。
『いつまでここに居ても構わない。
記憶が無くて不安なら、その不安が無くなるまで居ればいいじゃないか。』
その言葉に救われたとウキョウは思う。
でも何か大事な事を忘れてしまっている気がしてならない。
ただ漠然とここに長居をしてちゃいけないと考えていた。
『また考えているね…』
突然ユーリにそう言われ『え?』とウキョウは彼を見た。
『何か思い出したかい?』
『いや…でも夢を見るんだよ。』
『どんな夢?』
『何もない真っ白な空間に居て、誰かが俺を呼ぶんだ…
姿が見えないから誰か解らないんだけど、俺はその人の所に帰らないといけない気がする…』
『そうか…』
ユーリはただそう言ってしばらく黙ったまま道の先を見つめた。

