とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~





川の勢いに負けてしまいそうなコーディの姿に焦る。



思い出せ!!



“アイツ”を…!




『ウ…ウキョウ…もう手が…』




力ないコーディの声に右京が『駄目だ!放すな!』と言った直後だった。



小さな手が…



木からスルリと離れた…




「ジュンーー!!!!」





次の瞬間ドーーン!というけたたましい爆音とともに水柱が上がった。





水飛沫と一緒に川の中から現れた…藍色の瞳をした小柄な青年…



彼は気を失ったコーディを抱いて空中に浮いていた。




その光景に右京は目を見開いてただ呆然と見つめる。




束ねられた長い黒髪を揺らしながら、その青年は右京を見下ろす。




そうだ…俺が“アイツ”を呼んだんだ…




彼は右京と目が会うと目を細めて微笑んだ。




そして静かに右京の前に舞い降りた。




「…お久しぶりでございます…右京様…」



彼は異国の言葉でそう言った。



これは…日本語だ。



「右京…さま…だと?」



ちょっと驚いた顔をして青年は右京をじっと見つめる。



「…そういう事ですか…」



青年…ジュンはそう呟いて悲しそうに笑った。