とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~





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しばらくタクシーが走ったあたりで前も見えない程のスコールに見舞われ、忍は少し怖くなった。



タクシーの運転手はバックミラー越しにその様子をみて人の良さそうな笑みを浮かべた。




『お嬢ちゃん怖いのかい?ただのスコールだからすぐ止むさ。』



そう言われ忍も笑って『なら良かったです。』と答えた。




『こっちへは観光かい?』



『まぁ、仕事と観光両方ですよ。』




ニコールが答えると『そうかい』と言ってから振り返って運転手は少し真顔になった。




『お二人さん、気をつけな…ここらじゃ観光客は強盗の餌食だ。』



『あ、大丈夫。優秀な護衛がついてるんで~』



『ニコール…それってまさかとは思うけど、私の事!?』



『やだなぁ、シノブ!他に誰が居るって言うんだい?』



忍はムッと膨れてニコールの足を踏んでやった。



『いてッ!…ほら、運転手さん今の見た!?この子意外と怖いんですよ~…』



『失礼な!止めてください!』




二人のやり取りを見ていた運転手は声を上げて笑った。




『…ほら、お嬢ちゃん!スコールはもう止みそうだ!言った通りだろ?』



忍はそれを聞いて窓の外に目を向けた。