「…あの時も少しヤキモチした…」
ポツリと言った忍の言葉に右京が驚いたような表情をした。
「それって…いつ頃?」
「多分夏休み前。…いつも右京の周りには女の子が居たわね…」
「…まるで遊び人みたいな言い方やめてくれる?」
「ふふふ…本当は遊んでたでしょ?」
「ひっでぇ!遊んでねぇよ!」
─知ってる。右京は人気あったけど、色恋沙汰の噂は全く無かったよね…。
家ではワガママで甘ったれ。
嫌な事があるとすぐ拗ねる。
武道が大好きで、毎日毎日稽古ばかり。
そんな右京を見てるのが好きだった。
“私しか知らない右京”
あの頃はそれだけで満足してたのに、今は貪欲なまでに右京を独占したいと思ってる。
「ねぇ、右京。私しか知らない右京ってどれくらいあるだろう。」
「…意味わかんねぇし… 」
右京はちょっと照れたような顔をしながら、ぶっきらぼうにそう言って忍を後ろから抱き締めた。
「…大学卒業したらさ…二人で暮らさない?」
「…それはプロポーズ?」
「いや…さすがにまだそこまで踏み切れないけど、忍と離れてるのが嫌なんだ…」
─嬉しい…。
素直にそう言えたらいいのに口から出たのは「考えておく」って言葉だった。

