とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~





「…あの時も少しヤキモチした…」




ポツリと言った忍の言葉に右京が驚いたような表情をした。




「それって…いつ頃?」




「多分夏休み前。…いつも右京の周りには女の子が居たわね…」




「…まるで遊び人みたいな言い方やめてくれる?」




「ふふふ…本当は遊んでたでしょ?」




「ひっでぇ!遊んでねぇよ!」




─知ってる。右京は人気あったけど、色恋沙汰の噂は全く無かったよね…。




家ではワガママで甘ったれ。




嫌な事があるとすぐ拗ねる。




武道が大好きで、毎日毎日稽古ばかり。




そんな右京を見てるのが好きだった。




“私しか知らない右京”




あの頃はそれだけで満足してたのに、今は貪欲なまでに右京を独占したいと思ってる。




「ねぇ、右京。私しか知らない右京ってどれくらいあるだろう。」




「…意味わかんねぇし… 」




右京はちょっと照れたような顔をしながら、ぶっきらぼうにそう言って忍を後ろから抱き締めた。




「…大学卒業したらさ…二人で暮らさない?」




「…それはプロポーズ?」




「いや…さすがにまだそこまで踏み切れないけど、忍と離れてるのが嫌なんだ…」




─嬉しい…。




素直にそう言えたらいいのに口から出たのは「考えておく」って言葉だった。