右京の甘えたようなキスを拒めない。
『…Happy Merry X'mas…』
囁くような右京の言葉にさっきまでのイライラが嘘みたいに消えていく。
「…さっきヤキモチ焼いた?」
「焼いたって言ったら右京が喜ぶから言わないわよ?」
そう嘯く忍に右京がクスッと笑った。
渡り廊下から中庭を眺める右京の横顔を忍はチラッと見上げた。
─…綺麗…
最初に右京を見たのもクリスマスの晩だったと思う。
親族みんな集まってのクリスマスパーティーで、右京は6歳で自分は8歳。
“私の方がお姉さんね”
初めて掛けた言葉は確かこんな感じだったと思う。
あの時は背丈も同じ位だったのに、今は頭一つ半くらい背の高い右京…
初めて男の子として意識したのは何時だったか…。
─多分、中学の時だ。
“新入生にモデルみたいな子がいる。”
そう友達に言われて見に行ったら右京だった。
…ふと中庭を眺めていた右京が忍の視線に気付いて「なに?」と首を傾げた。
「…昔を思い出してた。
中学の頃、右京のファンクラブがあったの。」
「ぶっ…なにそれ!!」
「凄い人気だったな~って思ってた。」
ゲラゲラ笑う右京につられて忍も笑い出した。

