そんな谷地の事を忍は先輩としても尊敬している。
でも話すと意外と“乙女”な一面もあったりして、可愛いとも思う。
多分この会社で一番信頼出来るのは彼女だろう。
故にこの慰安旅行も谷地が行かなかったら忍も行かないつもりだった。
“飲み会の付き合いも仕事のうち”
そう言われて素直に「なるほど」と思えた。
夜になり他愛もない話をしながら大広間に向かう。
既に宴会は始まっていて、忍達が来ると「待ってました」とばかりに“お酌係”を強いられた。
一瞬露骨に嫌そうな顔をしてしまった忍は谷地に笑われた。
「小一時間もすれば酔っ払って判らなくなるから!それまで辛抱しなさい?」
珍しく谷地に先輩口調で言われ、渋々「はぁい」と返事をしてコンパニオンよろしく、お酌して回った。
─なにが“慰安旅行”よ…私は慰安されてないじゃん…
内心はそんな事考えていたが、出来るだけ顔に出ないよう頑張った。
「忍ちゃん、浴衣姿も色っぽいね~」
─黙れ!エロ親父が!!
…とは言えず、笑って誤魔化す。
「ハハハ…お世辞言っても何も出ませんよ~?」
「そうですよ~?前田係長!そういうの“セクハラ”ですからね!」
そうフォローしてくれたのは先輩の松山だった。

