少し瞳を潤ませてウリエルは微笑んだ。



『…俺の名前は…?』



─…ウキョウ…貴方はウキョウ…



『ウキョウ…』



小さく呟く様に自分の名前を繰り返す。



あえてウリエルではなくウキョウとバジリスクは彼に伝えた。



『…思い出せない…何か大事な事を忘れてる気がする…』



苦しそうな表情のウリエル…否ウキョウを心配そうに見つめた。



だが、それ以上は教える事はしなかった。



記憶とは個人のもの…



他人に教えて貰うのではなく、自ら思い出さないと意味がない。



─…焦らないで…



バジリスクはそう言い残して大きな翼を広げた。


飛び立つバジリスクの姿にウキョウは『ありがとう』と口を動かした。



彼女はそれを見てから空高く舞い上がって行った。




大丈夫…あの方はきっと記憶を手繰り寄せる…!



バジリスクは自分に言い聞かせる様に何度かそう繰り返し呟いた。




バジリスクからの報告を受けたハニエルは口元に手を当てて少し考えた。


『…“彼女”を見たら…思い出すかな…』



『“彼女”?』



『忍さんだよ。右京にとって彼女の存在が一番だ。』



リサは『そうね』と頷いた。