バジリスクがウリエルと思われる“人間”に接触したのはそれからしばらくしてからだった。
─ウリエルの事は好きだが、人間はやはり苦手だ─
バジリスクは彼が一人になるチャンスを待った。
意識を取り戻した彼はイマイチ生気の感じられない状態だったが、どうやら問題はなさそうだ。
ある日、彼はフラリと建物から出てトボトボと外へ出て来るのが見えた。
バジリスクはそれを離れた所から観察していた。
彼は緩やかな坂道を歩いて小高い丘まで来ると、吹き抜ける風を気持ち良さそうに浴びていた。
上空からそれを見下ろし、注意を引く為に甲高く鳴いてみた。
それに気付いてこちらを見上げる。
バジリスクは旋回しながら徐々に高度を下げ、彼から数メートル離れた岩の上に舞い降りた。
驚いた顔のその人物を真っ直ぐ見つめる。
─似ている…でも何処か違和感がある。
バジリスクを見つめていた彼はふと目を細めた。
そして…ゆっくり口を開いた。
『君は…俺の知り合いかい?』
バジリスクはその言葉に時が止まった様に硬直した。
─この人間は今何と言った?
“キミハ、オレノ シリアイカイ?”
やっと言葉の意味を理解した時、バジリスクは彼が“ウリエル”であると確信した。

