『ケイジャンは未だにイギリス人に対して友好的じゃありませんからね…。』
そう言って忍はアカディア人の子孫である、アメリカのケイジャンと言われる人達に会いに行った時の事を話し出した。
『当時を知る人達を探すのに苦労したわ…56年前の出来事だし…』
忍はアカディアでニックと別れ、単身アメリカのマサチューセッツ州のとある小さな村に向かった。
そこで出会ったケイジャンはフランス訛りの英語を話す老婆だった。
『当時の出来事はかなりショックだったみたいで細かく教えてくれたわ。その中で気になった話があったの。』
忍は愛用のビジネス手帳を開きながらこう言った。
“村に来たイギリス軍は何かを探していたみたいだった”…と。
『…探す…?アカディア人には何か伝承とかあったのかな…。』
『いいえ、特別そんな話は無かったみたいだけど…。』
忍の話を聞いていたアランが小さく息を吐いたのが判った。
『イギリスもフランスもそこに何かあると思ってその土地を求めた。…だが“空振り”だったって事か…。』
『あるいは何かを見つけたかも。』
だから用済みの村を焼き払ったのかもしれないとニックは続けた。

