バーに到着しカウンターを目指す。
『よぉ、クロウ。ジェイ達なら上に居るぜ。』
毎週のように顔を出す右京にジェイの兄であるマスターがジェイそっくりの笑顔を向ける。
『何飲む?』
『ジン。…ショットで。』
『なんだ、もう酔うつもりか?』
『酔えたらね。』
そう言って出されたショットグラスの中の液体をグイッと煽った。
喉が焼けるような感覚。
『店で暴れないでくれよ?』
前に酔った客が乱闘になり、8人を右京独りで鎮静化した一件以来彼は自分を特別視している。
どちらかというと、右京が酔って暴れないかを心配しているんだと思う。
『大丈夫だって。自慢じゃないが酔って暴れた事はない。』
暴れる時は至ってシラフである。
右京はもう一杯ショットグラスを貰うとそれを持って二階席に向かった。
『来た来た!遅いぞ、クロウ!』
『お前らが早すぎるんだろ?』
笑ってそう言うとちょっとお洒落をしたジュリアと目が合う。
『Hi、クロウ。』
『やぁ、ジュリア。なんか雰囲気違うね。』
『…おかしいかな…』
『いや…似合ってる。いいと思うよ?』
そう言うとジュリアはほんのり赤い顔で微笑んだ。
右京はそれに敢えて気付かないフリをして彼女の友達に挨拶をする。

