とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~






忍の脇から腕を伸ばし、キーを叩く。




新しく開いたウィンドウに一枚の写真が表示された。




「…似てる。」




“アルカディアの牧人たち”とそっくりな風景を収めた写真に忍は身を乗り出す。




右京はそんな忍の耳元に唇を寄せた。




「これはイングランド、スタッフォードシャーのリッチフィールド家の庭園にあった記念石碑。
あの絵をもとにした鏡像…つまりレプリカだね。」




「なんでこんな物作ったのかしら…」




「たぶんこれだと思う。」




そう言って右京は写真の石碑部分をズームしていく。




「なにかしら…何か刻まれてる。」




─"D.O.V.O.S.V.A.V.V.M"



「これが鍵だって説が有力だけど…正確に解読出来るのかって話。」




そう言いながら忍の耳に唇を這わせた。




そんな右京の誘いも全く気付かない忍は「ねぇ!」と突然振り返った。




「これイングランドなんでしょ!?行ってみようよ!」




「…忍ぅ…俺、さっきリッチフィールド家の庭園って言ったよね?人の家に入り込むつもり?警察に捕まるって…」




「あ、そっか…」




少し落胆気味の忍の肩に右京は顎を乗せて顔を覗き込んだ。