とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~





ノートパソコンの画面を見て忍は「う~ん…」と唸る。




もう20分はずっとこの調子だ。




「…ねぇ、忍。そんなに見ても“絵”は変わらないよ?」




頬杖をついて忍を見ていた右京が小さく息を吐いた。




彼の言う“絵”とはPC画面に映し出された一枚の絵画の事だ。




バロック時代のフランスの画家、ニコラ・プッサンの作品で“アルカディアの牧人たち”という絵画だ。




墓石にラテン語で"Et In Arcadia Ego"と書かれているのを牧人たちが覗き込んで想いにふける様を描いている。




「このラテン語の意味なんだっけ?」




「何度目だよ…。“我はアルカディアにもある”ちなみに!並び替えると"I Tego Arcana Dai"だ。」




それはさっきメモったなと思い出して手帳に目を走らせる。




「“立ち去れ! 私は神の秘密を隠した!”…これのせいで聖杯伝説の鍵だと考えられたんだよね?」




「…やっと理解出来た?」




「わっ…悪かったわね!ラテン語が苦手なのよ!」




拗ねる忍が座る椅子の隙間に右京は無理矢理跨がると、彼女を後ろから抱き締めた。