とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~





「忍~!電話待ってたよ。」




嬉しそうな右京の声に少し癒される。




「お願い…私をもっと癒して…」




「なんだ!?…今日はエロいな…」




そんな右京の冗談を無視して携帯に向かって愚痴を溢す。




「…いいな、温泉…俺も行きたい…」




「私も行くなら右京と行きたいよ…」




何が哀しくて職場の同僚らと行かなきゃいけないのか…。




「帰国したら二人で行こうな!」




「うん!行く行く~!…あ、それはそうと、ニコールから右京に仕事の件で電話するようにって言われたんだけど…」




「あ~“聖杯”の件か?」




そう言うと右京は何があったかをポツリポツリと話し始めた。





   ◇◇◇◇◇◇◇◇




事の発端はクドラクの言っていた『ルシファーが“契約の箱”を狙ってる』という話だった。




“契約の箱”とは旧約聖書に記載されている聖櫃の事だ。




伝承では神の指示で作られた箱で、中には“十戒を記した石板”“マナと言われる食物が入った金の壷”、そして“アロンの杖”が納められているらしい。