『ちょっとサイドワークの方で調べたい事があってね…ついでだから仕事を兼ねてしまおうかと考えてるんだ。』
『珍しい!いい心掛けだと思いますよ?』
『俺だってちゃんとやる気はあるんだよ~?』
そのやる気をいつも見せてくれると有難いのだが…
『で、今回のテーマは?』
『“聖杯伝説”だよ!』
『“聖杯”!?…ワクワクしますね!!』
『だろ~?シノブには絶対気に入って貰えると思ったんだよ~』
忍の反応に気をよくしたニコールは“聖杯”について語り出した。
そもそも“聖杯伝説”とは、不思議な力が秘められた聖杯を探し求める騎士の物語だ。
また一説ではキリストの血を受けたともされ、一般的には“聖遺物”に分類されている。
『なんでまた聖杯を?』
『あ~…説明したいのは山々なんだけど、今から俺アメリカに飛ばなくちゃでね~?』
…忙しない人だ。
『詳しくはクロウに聞いて!』と一方的に電話を切られて忍は受話器を睨んだ。
「…どいつもこいつも…なんなの一体!」
パラパラと帰り支度をする同僚を見て、忍も残業をするのが馬鹿らしくなって来た。
「私も帰ろう…」
駅まで歩きながら右京に電話を入れる。

