とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~





「ニコールからラブコールがあったぞ。後で連絡してみてくれ。」




「……そっちの方が重要じゃないですか…」




そんな忍の呟きも聞いてないらしく、新庄は『温泉温泉~♪』とPCを叩き始めた。




─…検索してる!あの人、絶対温泉を検索してる!




軽く殺意を抱きながらイラつく気持ちを圧し殺して仕事に戻る。




「新庄さんなんだって?」




向かいの机からひょっこり顔を覗かせた谷地に「温泉ですよ…」と小声で話す。




「…あの馬鹿編集長、そんな事言ってんの!?」




事情を聞いた谷地も眉間に皺を寄せる。




「今始まった事じゃないですけど…おかしいですよ、あの人…」




あれで仕事が出来るんだから不思議だ。




谷地も「同感!」と肩を竦めた。




仕事が一段落した夕方、ニコールに電話を入れる。




『やぁ、ハニー。ほったらかしでごめんよ~?寂しかったかい?』




─寧ろずっとほっといて欲しかった…




とは言えず、ニコールの言葉をスルーして『仕事ですか?』と聞いた。




『仕事と言えば仕事だね~…』




ニコールの言いたい事が掴めなくて首を捻った。