「ニコールからラブコールがあったぞ。後で連絡してみてくれ。」
「……そっちの方が重要じゃないですか…」
そんな忍の呟きも聞いてないらしく、新庄は『温泉温泉~♪』とPCを叩き始めた。
─…検索してる!あの人、絶対温泉を検索してる!
軽く殺意を抱きながらイラつく気持ちを圧し殺して仕事に戻る。
「新庄さんなんだって?」
向かいの机からひょっこり顔を覗かせた谷地に「温泉ですよ…」と小声で話す。
「…あの馬鹿編集長、そんな事言ってんの!?」
事情を聞いた谷地も眉間に皺を寄せる。
「今始まった事じゃないですけど…おかしいですよ、あの人…」
あれで仕事が出来るんだから不思議だ。
谷地も「同感!」と肩を竦めた。
仕事が一段落した夕方、ニコールに電話を入れる。
『やぁ、ハニー。ほったらかしでごめんよ~?寂しかったかい?』
─寧ろずっとほっといて欲しかった…
とは言えず、ニコールの言葉をスルーして『仕事ですか?』と聞いた。
『仕事と言えば仕事だね~…』
ニコールの言いたい事が掴めなくて首を捻った。

