アンダーソンは何となく“臭う”と感じた。
年頃の娘がレポートの為にゴーストハウスと噂の廃墟に行ったりするだろうか?
しかも気になるのはゲイリー伯爵でも屋敷でもなく、“廃墟”というところだった。
大概“廃墟”は若者の溜まり場になりやすい。
アンダーソンはまだ何か言っている教師に『貴重なお話、ありがとう』とにこやかに微笑むと高校を後にした。
その足で車を郊外まで走らせる。
『この分なら明るい内に調べられるな…』
そう考えていたが、屋敷の前にセダンが停まっているのが見えた。
…あの車…見たことあるな…
アンダーソンがそのセダンの隣に車を停車させると、エンジン音に気付いたのか入口に誰かが出てきた。
『…警部?…アンダーソン警部じゃないですか?』
声の主は刑事時代同じ署にいた後輩だった。
『ダン!?…何やってんだ、こんな所で…』
『それはこっちの台詞ですよ…警部は?…ああ、もう警部じゃないんでしたね…。』
ダンはそう言って人懐こい笑みを浮かべた。
『探偵を始めたんだ。どうものんびり老後を過ごすのが性に合わなくてね…』
アンダーソンの言葉に『噂は聞いてますよ』とダンは言った。

