とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~





アンダーソンは何となく“臭う”と感じた。




年頃の娘がレポートの為にゴーストハウスと噂の廃墟に行ったりするだろうか?




しかも気になるのはゲイリー伯爵でも屋敷でもなく、“廃墟”というところだった。




大概“廃墟”は若者の溜まり場になりやすい。




アンダーソンはまだ何か言っている教師に『貴重なお話、ありがとう』とにこやかに微笑むと高校を後にした。




その足で車を郊外まで走らせる。




『この分なら明るい内に調べられるな…』




そう考えていたが、屋敷の前にセダンが停まっているのが見えた。




…あの車…見たことあるな…




アンダーソンがそのセダンの隣に車を停車させると、エンジン音に気付いたのか入口に誰かが出てきた。




『…警部?…アンダーソン警部じゃないですか?』




声の主は刑事時代同じ署にいた後輩だった。




『ダン!?…何やってんだ、こんな所で…』




『それはこっちの台詞ですよ…警部は?…ああ、もう警部じゃないんでしたね…。』




ダンはそう言って人懐こい笑みを浮かべた。




『探偵を始めたんだ。どうものんびり老後を過ごすのが性に合わなくてね…』




アンダーソンの言葉に『噂は聞いてますよ』とダンは言った。