とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~





気になったのは“優等生”だということだ。




普段大人しく、学校での評価も高い若者に限って、ハメを外す時の度合いが半端ではない。




親や教師からの過度のプレッシャーがそうさせるのかもしれない。




だがアンダーソンは敢えてそれは言わずに『調べてみます』と答えた。




『毎回依頼人の方に言うんですが、私の仕事は娘さんについての調査です。見つける事ではありません。あくまでも探偵ですので、それをご理解頂きたい。』




『それで構いません…。よろしくお願いします。』




そう言って依頼人は事務所を出て行った。




『さて…調べてみますかな…』




アンダーソンは独り言を呟いて重い腰を上げた。




   ◇◇◇◇◇◇◇◇



調査はまず聞き込みからと決めていた。




これは刑事時代から彼の慣わしだった。




失踪したのはラナという名の18歳の少女だ。




高校の正門前で近くを通り過ぎるた男子生徒に『ちょっと君…』と声をかけた。




『この学校にラナ・キャリーって生徒が居たと思うんだが、知ってるかい?』




『ラナ?知らないヤツいねぇよ。』




『それはいい意味で?悪い意味で?』




『両方かな…おじさん誰?』




首を傾げた少年にアンダーソンは柔らかく微笑んだ。