そして先程かかってきた電話ももちろん“失踪事件”である。
駆け出しの探偵であるアンダーソンに仕事を選べる程依頼があるわけない。
午後訪ねて来るだろ依頼人の為に彼はコーヒーメーカーのスイッチを入れた。
予想通り依頼人の女性は午後やって来た。
『娘さんが居なくなったそうですが…?』
『ええ…黙って外泊するような子じゃないんです。…警察は事件性がないと言ってまともに聞いてくれませんでした。』
そうだろうなと言う言葉を飲み込んで『なるほど。』と答える。
『詳しくお聞きしていいですか?…娘さんの交遊関係は派手な方ですか?』
『友達は多い方だと思いますが、決して派手ではないと思います。』
年頃の娘は親に隠れて遊ぶという事はよくある。
アンダーソンは母親から特に仲の良い友人の名前を数名聞き手帳にメモをした。
『成績も優秀で、この秋から留学する事になってました…。もし付き合っている友人のせいなら、一言文句を言ってやりたいわ!!』
あくまでも“自分の子は唆された”と主張する母親にアンダーソンはげんなりする。
みんなそう言うのだ。
『うちの子は悪くない』
アンダーソンにはそう口にする事で親が自分自身に言い聞かせている様にしか見えなかった。

