─おかしな事を言うね…
私はバンパイアだ。人間を騙して美味しく頂くのが流儀だと思うが?
『バンパイアの流儀なんて知ったこっちゃない。』
向こう側は真っ暗な闇が広がり、何も見えずクリスは進むことを躊躇した。
『俺が先に行くよ。』
右京は小さな発光した球体を出現させて辺りを照らした。
扉の先は地下へ続く階段だった。
階段が終わると長く薄暗い廊下が続く。
─君は私と似た血の匂いがするね。
会話を聞いていたクリスが『一緒にすんな』と呟いた。
ふと前方に人陰が見えた。
バジリスクと一緒にいた男だ。
だが、さっきまでとはまるで別人のようだった。
一言で表すなら“生気がない”とでも言うべきか…。
彼は黙って傍らの扉を開け、右京達に中に入るように促す。
幾つかの頼りない燭台の光に照らされ、豪華な料理が並んだ食卓。
奥の上座に座った人物はワイングラスを片手にこちらを見て優雅に微笑んだ。
『やぁ。ようこそ、我が館へ。』
身なり良い青年は気味の悪いほど蒼白い肌をしていた。
彼はグラスの中の赤い液体を飲み干してナプキンで口を拭った。

