右京は手のひらに小さな炎を出すと、バジリスクの傷口を炙った。
皮膚の焼ける臭いと苦痛に歪むバジリスクを見てクリスは思わず『大丈夫なのか!?』と聞いた。
『俺の右腕だぜ?問題ない。…このくらいで済んで良かった。』
右京は『少し休んでろ』とバジリスクの頭を撫でた。
その手に安心したように彼女は目を閉じた。
右京は屋敷を見上げ立ち上がると、どこから侵入しようか悩む。
『正面か…それとも…』
『…さっきので気付かれない様に侵入する事が不可能だってのは判った。』
クリスは肩を竦めて『どこらかでもいいさ』とおどけた。
『ちなみに、吸血鬼ってのは知っての通り太陽の光に弱い。だから常に地下に潜んでるハズだ。』
『なるほど。じゃあ…』
右京は屋敷の正面に歩いて行くと徐に扉に手を翳した。
クリスが耳を塞ぐと同時に爆音と共に扉が吹き飛んだ。
『正面から行こう。』
『…少しは遠慮しようぜ?ここ一応“伯爵邸”だぞ…』
右京は『あ~そうだっけ』と気にもせずズカズカと館の中に入って行った。
『…アイツ、どんどん図太くなってくな…』
ポツリと呟いたクリスの独り言に『何か言った?』と右京が振り返る。
『…いや…なんでもない。』
クリスはそう答えて彼の後に続いて館へと入って行った。

