いくら走っても変わらない風景にクリスが『こっちであってるのか?』と疑問を口にする。
『血の匂いが濃くなって来たから間違いないはず。』
だがクリスの言うように見渡す限り鬱蒼と繁った木々と闇しかない。
本当に方向を間違えたかと疑い始めた時、前方に古びた洋館が見えた。
『…あれか…』
クリスの呟きに応える前に右京は大袈裟なくらい大きな門へ駆け寄った。
軽く押してみたが鍵が掛かっているのか、ビクともしない。
『開かないのか?…入口は別にあるのかな…』
キョロキョロと辺りを見回すクリスを余所に右京は扉に手を翳した。
一瞬ポッ…と手のひらが光ったかと思うと、派手な爆音と共に煙幕が上がってクリスがよろめいた。
唖然と見つめるクリスの目に映ったのは、仁王立ちしたままの右京と、依然として閉じられたままの扉。
が、優に数秒置いて扉が向こう側にゆっくりと倒れ、再度爆音と共に砂ぼこりが上がった。
『……もう少しこっそり開けられ無かったのか?』
『…う…うるさいな…力の制御が難しいんだよ!』
微かに風を纏った右京が立ち込める煙へと足を踏入れた。

