とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~





生温い湿った風に混じるバジリスクの血の匂い。




右京は闇を見つめて瞳を光らせた。




かなり出血しているのが判る。




まさか、バジリスクが殺られた…?




そんなハズはない。




黄泉の門でも悪魔相手に百戦錬磨の彼女が負けるなんてあり得ない。




だとしたら…




『場所を教えてるのか…!』




それにしたってこの出血量は異様だ。




『クリス。お前はここで待ってた方がいいかもしれない。』




『断る。冗談じゃない。』




『…そう言うと思ったよ。一つだけ注意して欲しい。

“血に触れるな”』




その理由を理解したクリスは小さく舌打ちをした。




『毒か…。判った。お前は大丈夫なのか?』




『いや、俺もヤバい。彼女の毒は解毒が難しい。…人間よりかは毒の回りも遅いとは思うが…。』




そういえば過去に一度同じような事があった気がする…。




内容は思い出せないが、今はそんな事どうでもいい。




あまり状況が良くないのは確かだろう。




『方角はどっちだ?急ごう。』




クリスの言葉に頷くと右京は走り出した。