とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~





バジリスクはガックリと肩を落とした。




『完全に命令違反だわ…』




予定では自分の血の匂いを嗅いだ者を操るつもりだったのだ。




マインド・コントロールは彼女の十八番で、血に触れなければ死なせずに済む。



バジリスクは毒でジワジワと灰になっていくバンパイア数体を見て自己嫌悪する。




“なんだ、このザマは!”




相手が一人だと思い込んでいた自分の誤算が招いた失態だった。




おまけに怪鳥である自分は夜目が利かない。




無数の気配を感じ取る事に意識がいってしまい、マインド・コントロールに集中出来ない。




しかも悪いことは大概重なるものだ。




ヒョイヒョイとバンパイア達をかわしていて一瞬視界が歪んでよろける。




『…!?…』




─傷が深すぎた…!?




動き回っていたせいで思いの外出血量が酷い。




かと言ってバンパイア達がバジリスクを襲わない訳ではない。




毒で灰になった同士を見ても、ただ血を求めて向かって来る。




『あなた達…頭悪いわねッ!』




バジリスクは風を起こして一気にバンパイア達を弾き飛ばす。




その最中、あの男がその場から逃げ出すのが見えた。




だが、止めどなく湧いて出るストリゴイにバジリスクは身動きが取れなかった。





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