バジリスクは男の胸を押し返すと自分の手首を噛み切った。
ポタリと流れ落ちる血の匂いに男が喉を鳴らした。
『…あら、欲しいの?…はしたないわね…』
ダラダラとよだれを垂らしながら数歩近付いた所で男はハッとして上を見上げた。
『…なに…?』
ザワザワと辺りの木々がざわめいた。
─何か…居る…
『夜は苦手なのに…ついてない…』
思わずそんな愚痴が溢れた。
湿っぽい息遣いと、身に刺さる無数の視線。
手首から垂れた赤い液体が血溜まりを作る。
突然何かが自分に向かって来る気配を感じてバジリスクはフワリと飛び退いた。
バンパイアだ…!
血溜まりに這いつくばって一心不乱にそれを舐めている。
その異様な光景に見とれていると背後から気配を感じて高く飛び上がった。
更に違う方向から気配。
空中で身を翻し、地に手を着いて着地する。
すかさずまた気配。
バジリスクは舌打ちをしながら傷付いた腕を振りかざす。
飛び散ったバジリスクの血がバンパイアの目を直撃した。
彼女の血に触れたバンパイア達がのたうち回る。

