とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




『クリス。お前の秘密を知っといて俺の秘密を明かさないのは意に反する。』




右京はそう言うと手の平を上に向けた。



発光する球体を出現させると右京は口角を上げた。




『…エスパーか…?』




『正確には違う。…俺は元々ここの住人じゃない。』



右京はTシャツを脱ぎながら『信じる信じないは勝手だが…』と付け加えた。




クリスに背中の傷を見せた。




『証明する手段がないんだ。もがれちゃってね…』



『…酷い傷だな…これで生きてたってのも不思議だ。』



『…一度“死んだ”のかもしれない。』



『もしそうなら、お前は生かされてる事になる。』




─生かされてる…?




『…ならば俺は右京を殺す訳にはいかない。』




クリスは小さく『信じるよ』と言った。




『で…コレ、俺に使えと?』



『剣術が出来るってアランから聞いた。…使えるだろ?』




『多分…』




木刀しか使った事がない右京にとって真剣は酷く重く感じた。




『本当はマグナムの方が接近しないで済むから安全なんだが…』




『いや…こっちでいい。弾の無駄使いはしたくない。』




クリスは無表情のまま『それもそうだな』と答えた。