とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




“クドラク”が居たって事は…皆やられたのか…!



『落ち着いて聞けよ…クリス。…お前の母親は“ストリゴイ”になった。』




その言葉にクリスは一瞬思考が停止して何を言ってるのか判らなかった。



『…俺はお前の母親を…殺れなかった…』




グレイは『お前の顔が脳裏を過って引金を引けなかった…』と力なく呟いた。



いつも冷酷なグレイらしくない台詞にクリスは泣きながら『喋るな!』と怒鳴った。




『…ありがとうグレイ…俺が後は何とかするから…死なないでくれ!』




だがグレイはクリスの言葉を無視して話し続けた。



『…“クドラク”は逃げたが、村人が…まだ数人居る…ああ、違った…“ストリゴイ”だ…ははっ…吸血鬼を人間…と見る様じゃ…俺は失格だな…』




グレイは一人で皆を始末してたのか…!




『ゴメン…グレイ…!俺も頑張るから死なないで!』




─俺を独りにしないでくれ…



クリスは気配を感じて銃を草むらに向けた。



片手で涙を拭うとグレイの手から銃を取った。



『借りるよ…後は任せて休んでて。』




クリスは深呼吸して呪文を唱えた。




『“見た目に惑わされるな。非情になれ。”』




そして草むらに向かって2丁拳銃を構えた。