かつて自分の側近として仕えていた─今も大して変わらないのだが─彼女は寝起きだけは最悪に悪かった。
この状況だと30分は何を言っても無駄だろう。
ニックはまるで人形の様な彼女に魅せられた様にジッと見つめていた。
『言っとくけど…コイツ、怪鳥だからな?』
『…ああ…判ってんだけどさ…信じられない…こんなに可愛い子を見た事ない…』
『…寝ぼけて昔腕をかじられた事がある。…以来、寝起きは近付かないと決めている。』
右京の台詞に伸ばしかけた手をピタッと止めた。
『…“かじる”…?』
『ん。…今は手を出さない方が身のためだ。』
そう言って右京はニックをリビングに来るよう、顎で合図した。
ミネラルウォーターを旨そうにぐびぐびと飲む右京に、ニックが後ろから『なぁ』と話かけた。
『腑に落ちないんだが…なんでバージがお前の布団で寝てる訳?』
『一緒に寝てたからだろ?』
『や…やっぱり浮気してたんじゃないか!?』
『だから、してねーって!!普通に一緒に寝てただけだって!!』
疑いの眼差しで睨むニックに右京は小さく息を吐くと両手を挙げた。
『じゃあ本人に聞いてみろ!』
右京はドンッ!とペットボトルを置いて着替えを手にバスルームへと消えて行った。

