人間が“祈る”という行為の意味が今まで理解出来なかったが、“こういう事なんだ”と漠然と思った。
自分ではどうする事も出来ない事をどうにかしたいから“祈る”のだ。
─そう考えると自分は少し“人間”に近付けたのかな…
いや、違う。
人間は愛する者を“喰イタイ”とは思わない。
そのうち忍を喰い千切ってしまうんじゃないかと不安になる。
もっと触れたいのに触れるのが怖い。
バスルームから物音が聞こえて忍が出て来たのが判ったが右京は動けなかった。
バスタオル一枚で正面に立つ忍を見つめる。
彼女は何も言わずに身を屈めて右京に顔を近づけた。
忍の優しいキスにちょっと救われた気がした。
「…シャワー空いたよ?」
「…ん…。忍…もっかいキスして…」
彼女は右京の言葉に微笑むと、またキスをくれた。
「そんな不安そうな顔しないで…」
そう言う忍を右京はギュッと抱き締めた。
「…ほら、シャワー行ってきな?」
忍は「世話がやけるわね」と言いながら右京をバスルームへ連れて行く。
「忍…俺さっきお前を喰おうとした…」
「……」
「…そのうち本当に喰うかもしれない…」
「…構わないわよ?右京がそうしたいなら…」
忍はそう言って笑った。

