とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~





学校から戻ったコーディは右京の姿を探す。



『おかしいなぁ…シノブ連れてくるって言ってたのに…』



スーザンおばさんの家から戻ったミーシャと玄関で鉢合わせになる。



『ねぇちゃん!ウキョウは?』



『さぁ…まだ帰ってないわよ?』



『ちぇ…楽しみにしてたのに…僕探して来る!』



ミーシャが止めるのも聞かずに外に飛び出して行った。




後方で何か言って居る気がしたが気にせず丘へと急いだ。




渓谷から吹き上げる風に目を細めて辺りを見回す。



『ここじゃないのかな…』




そのまま湖へと足を向けた時、頭上にバージが見えた。




『やっぱ湖か!』




日の光りに輝く水面が見えた時、急降下してきたバージに驚いて『うわっ!』と短く悲鳴をあげた。




「バジリスク?…誰か居るの?」




異国の言葉が聞こえて来てコーディは静かにそっちへと歩き出した。




長い黒髪に大きな黒い瞳…



直ぐに“シノブ”だと判った。




声を掛けようとすると、彼女は人差し指を立てて口元に持って行く。



そして自分の膝を指差した。



コーディが近付いてみると、気持ち良さそうに寝息を立てる右京が居た。



コーディと目が合うと彼女はニッコリと微笑んだ。