湖へと入って行く右京の後ろ姿を目で追う。
痛々しい程の背中の傷。
右京は翼を無くした。
もうあの立派な6枚の翼を見ることはないだろう。
右京はそれをあまり気にした様子はない。
人間味を増した右京は何処かイジワルで忍は少し戸惑う。
オッドアイのせいか忍に見せる笑顔ですら妖しく、以前とは雰囲気に違いを感じた。
あどけない天使の様な要素が消え、妖しい悪魔的要素が支配している様な…
「…何?…あんま見つめられると…照れる。」
「右京変わったね…」
「俺だって成長してんだよ。大人になったって言って欲しいな…」
「そうか…大人になって色気が出たのかな…」
確かにそう言われればそうかもしれない。
「私だけ成長出来てないのかな…」
「そんな事ない。会う度に忍は綺麗になってくからずっと心配なんだぜ?」
そう目を細めて言う右京に忍も「ありがと」と笑った。
右京は忍の隣にうつ伏せになると腕の上に顔を乗せて忍を見つめた。
「さっき…背中が痛かったの?」
「あ~…記憶とシンクロするみたい…それで痛む。でも普段はなんともないよ。」
「…そか…痛そうに見えたから…」
右京は「ちょっとね」と大したこと無いとでも言う様にサラッと答えた。

