セイバーの乗り心地は最高だった。



たまに乗せて貰う高山社長のベンツには到底叶わないが、それでも俺にしてみたら最高だ。



カーナビも付いているし、オールレザー張りのシートだし、アルミホイルもカッコいい!



CDプレイヤーも最新式のが搭載されてあった。



かなり高そうな車だった。



一応、予算はアルバイトで貯めていた250万円までで考えていたが、新井社長が



『え~とねぇ、車体価格、装備品、点検費、諸経費も全部ぶっ込みで100万円丁度で良いですよ。』



「100万円丁度でって、それは安過ぎでしょう!

ムチャクチャな値段設定ですね。

ちゃんと計算してください。」



『しましたよ!

一応、この車は5年落ちですから。

それに、この車の塗装はオリジナルのブラックメタリックじゃあ無いんですよ。

一応、ワンオーナーなんですけど、前の持ち主が近所の子供にイタズラされてキズを付けられたからと言って、全塗装したんですが、オリジナルのブラックが丁度無くて、持ち主が急かすもんだからメーカーが違うブラックメタリックの塗装を施したそうなんですよ。』



「それにしても安過ぎでしょう!」



『大丈夫です。

今回、桧山さんの息子さんと知り合えましたから、それだけで車の数台分以上の価値がありますから。』



「そんなもんなんですか!?」



『はい、そうなんですよ。

仮に、桧山さんが御友人の何人かと初のドライブに行くとしましょう。

この車、良いなぁ!どこで買ったんだ?みたいなやり取りの中でうちのお店の名前が出たら、それが私の財産に繋がっていくんですよ。』



「なかなか面白い発想ですね。

もし仮に、僕がカー・パラダイスの名前を出さずに、親父の知り合いの店で買ったんだ!としか言わなかったら、100万円丁度で売ったことが損益になるのでは!?」



『いえいえ、絶対に貴方は私のお店の名前を口に出します。

それも、沢山の人に。

それも、自分から率先して喋ってしまいますよ。』



「そこまで言われると、その根拠が知りたくなってきますよ、

社長、教えてください。

何故、僕が率先して喋ってしまうんですか!?」



『それを今、ここで言うと、私の魔法が解けてしまいますので、言えないんですよ。

でも、間違い無く自分で答えが得られますよ。

それは確かです。』



「なんだか狐につままれたようなお話ですね。

うちの親父が、新井社長を事を面白い社長さんだって言ってましたが、何となく分かってきました。」



『ハハハ、左様ですか!

それでは、契約といきましょうか。

それから、車検は1年6ヶ月ぐらい付いてますので、再来年の2月になりますが、最初の車検代はうちが負担させて頂きますので!』



「えぇ、そんなことしたら益々社長が損しますよ。」



『心配には及びません。

これで既に後10台以上は桧山さん経由でうちの車が売れますので!』



ダメだ!



その自信は何処から来るんだろうか!?



本当に新井社長の魔法にかかっているみたいだ!



どうしても知りたいが、教えてくれない。



事務所に入って契約書にサインした。



俺は未成年なので、親父のサインもいるが、委任状が有るのでそれを渡して、契約成立だ。



名義変更の手続き等で納車は1週間後の27日の土曜日である。



50万円を内金として入れ、27日の納車時に残りを払ってくださいと言われたので、素直に応じてその日は帰宅した。



家に帰ってから、親父に新井社長とのやり取りを話して、親父から聞き出そうとしたが、ナルボド!と笑って頷き、それ以上は教えてくれなかった。