深夜、特にやることもなく暇を持て余していた僕は、テレビを付けっぱなしにしたままうたた寝をしていた。

暖かい部屋の中でリラックスしていた僕は夢を見ていた。

それは兄貴の夢だった……。

僕が部屋に一人でいると突然兄貴が帰ってきた。

だが、僕は久しぶりに兄貴と再会したというのに、嬉しいとは思わなかった。

それよりも驚き、ショックだった……。

それは兄貴が……。


その時僕はインターホンの音で目を覚ました。

その時は何で夢の中で自分が驚いていたのか覚えていなかった。

なんであんな気持ちになったんだろう……?

そもそも何であんな夢を見たんだろうか……?

久しぶりに兄貴に会ったというのに……。

ピンポーン。

何回目か数えていなかったがインターホンのチャイムが鳴った。

こんな時間に誰だよ。

時計の針は既に深夜0時を回っていた。


一人暮らしを始めてから僕は基本的にインターホンが鳴っても出ないようにしていた。

本当の友達や知り合いなら携帯にメールなり電話で連絡が入るはずだ。

それをしないで突然やってくる来客は僕が必要としていない“招かれざる客”だ……。

新聞の勧誘や何かのセールスだったり、宗教の勧誘だったり、どうせ面倒な事に決まってる。

ドアの向こうに立っているのが詐欺師だという可能性だってある。

面倒なトラブルに巻き込まれるのはゴメンだ。

だから僕は必要以上にドアを開けないし、インターホンにも出なかった。

ピンポーン……。

それでもまだブザーは鳴り止まなかった。

一体、誰だよ……。

僕はようやく重い腰を上げ、足音を殺して玄関のドアに忍び寄っていった。

覗き穴からそっと外の様子を見てみた。

そこには見た事もない若い女が立っていた。

長い髪と下を向いていた為、顔はよく見えなかったが、間違いなく僕の知っている女ではなかった。

時間も時間だ。

僕は急に怖くなった。

こんな時間に見ず知らずの女が訪ねてくるなんて絶対におかしい……。

ピンポーン……。

それでも女はチャイムを押し続けている。

まさか幽霊……?

僕の頭の中はパニック状態に陥っていた。


【続く】