少女は一人でそこにいた。
 

 ふと気がついた時には小さな農村のはずれにある大樹の下に座っていたのだ―――力なく、幹にもたれるようにして。

 降って湧いたとでも言うのだろうか。

 少女はその場に歩いてきたわけでもなく、誰かに連れられてきたわけでもなく、本当に突然、まばたきほどの間にその場に現れたのだ。
 
 もし、何もなかった樹の元にいきなり人が現れたら……。
 
 
 その騒ぎたるや、容易に想像がつく。
 
 そのうわさはこの村だけに留まることはなく、隣の村や町、はてには近隣諸国にまで届くことになるだろう。
 
 この一瞬の出来事の目撃者がいなかったのが、少女にとって幸いなのかは分からないが……。


 その少女はこの辺りにいる子供達とは見た目が明らかに違っていた。
 
 真っ先に目に付くのは身に着けている衣服。
 
 くるぶしが隠れるほど裾が長く、たっぷりとした袖のついたワンピースのような形をした服は動き回るには不便そうで、家事労働を手伝う農村部の子供達には適した服装ではない。
 
 ドレスとも違う型。
 
 異国の民族衣装ともまた違う。
 
 この辺りでは目にしたことのない衣服。
 
 そして違うのは形だけではなく、使われている布地こそがまったく異なっている。

 陽の光にキラキラと反射し、淡く虹色に輝くその布は一体何で作られているのか皆目見当がつかない。