そんなマーサを幼いリリは、自分が出来る限りに懸命な看病をした。

 それこそ遊ぶ時間や寝る間も惜しんで……。
 

 マーサは少し困ったような顔をして、

“自分のことは気にしないで、外で遊んでらっしゃい”

 と、リリに言っているのだが、彼女は聞かないのだった。


“いいの、私が好きで看病しているんだから。

 マーサこそ、気にしないで“

 そう言って、リリは進んでマーサの身の回りの世話をする。


 冷たい北風が吹き荒れ始めても、マーサの熱は下がらない。

 マーサの額を冷やすために、リリは毎日数時間おきにベットを訪れる。


 手が切れそうなほど冷たい水につけたタオルを絞り、熱のこもるマーサの額にそっと乗せた。

 今は穏やかな音息を立てて、マーサは眠っている。

 このところ熱にうなされてよく眠れなかったようだから、今日はちょっとだけ安心するリリ。

 しかし、そんな少しの安堵ではリリの心は完全には晴れない。


 大分やつれたマーサの顔を覗き込んで、リリは心の底から願う。

――――マーサが早く元気になりますように……。
 
 教会でもらった十字架を握り締めて、リリは祈る。